いちばん好きだった人が結婚をした

いちばん好きだった人が結婚をした

いちばん好きだった人が結婚をしたことを知った
結婚をした時期から、1年以内でのゴールインだと逆算できた

その人はわたしにとってのはじめての人で、身の回りのあらゆる事象が彼を想起させるくらいには長い期間を共に過ごし、葛藤はあったが、最終的に、袂を分かつことになった あるいは若さゆえの決断であったかもしれない
その後、彼以外の人とも何度か恋愛をして、そのときのわたしなりに誠実に相手を愛し、でも振り返ると「絶対的」であった彼との関係性に比べるとどこかかりそめに思えた

メンヘラ気質のある女の人がその自己肯定感の低さのあまり愛してくれる男の人を神格化しすぎてしまう現象に似ているのかもしれない
あるいは、どれほど「詩的」であったか「ドラマのような」恋愛であるかという愛の深さとは完全に独立したベクトルを、愛と脳内置換してしまっているのかもしれない
いずれにしてもあの頃は、あの頃のわたしに感じられた側面でしか感じられなかったので、記憶の中にあるほど完璧じゃない部分もたくさんあったかもしれない

それでも、今でも、彼に愛されてたことがわたしの人生におけるもっとも幸せな出来事であったと言える 些末なことは現時点でのわたしの統一化した指標で測りたくない


別れることにしてからそれなりに月日が経って、今は月に一度くらい夢に見る以外は通常の生活に戻れてるつもりだった 結婚の事実を知ってこんなにショックを受けてる自分にびっくりした
唯一結婚をしたいと思えた人だった 世の理を教えてくれて、不思議なくらい精神の支えで、わたしにとっての信条、わたしにとっての全てでいたんだよ
袂を分かつことを決めた時点で何も期待してはいけないことも分かっていたしそのルールに従ってたつもりだけど、それでも、ルールを凌駕するくらいの何かがあってもいいって思っていた

 

この問題にどう決着を付けるのかに対して、わたしに選択肢はない わたしにできるのは前を見ることだけ 前を見るというのは、頭の片隅にでも「いつかまた彼とよりを戻すかもしれない」「結局最後に結ばれるのはこの人だろう」という妄想を捨てること あれから出会ったどの人も彼にはかなわないかもしれないということに気づかないふりをすること この切なさを昇華できるのは(この経験があったからこそ今のわたしがいるんだ)っていつの日にか思えるように、いつかそう思えることだけを救いに日々をこなすこと